こちらの現場は、クロマツやカエデ、ツツジ類などが植えられ、昔ながらの趣を感じさせる和風庭園が広がっていました。
しかし、お施主様がご高齢となり、十分な管理が難しくなったため、庭全体に雑草が繁茂し、荒れた状態となっていました。
お施主様のご要望は、除草作業と併せて不要な低木や草本類を伐採し、庭園の通路部分を全面的に砂利敷とすることで雑草対策を行いたい、というものです。
雑草が著しく繁茂し、和風庭園であることも
分からないような状態。
設計にあたっては、まず建物前面の「見せる部分」と庭園背部の「メンテナンスを簡略化する部分」とにゾーニングを行い、雑草対策の範囲を絞ることで工事費を抑えるよう配慮しました。
このような広い庭園では、手前の植栽などで背部の雑草を視覚的に隠し、施工範囲をメリハリ化することで、工事費を下げる工夫が求められます。
幸い、今回の現場は隣家との間に波板の仕切りがあったため、背部の雑草が繁茂しても隣家への影響がない状況でした。
また、このゾーニングにより、庭園背部にて発生土を場内処分することも可能となりました。
一段高くなっている庭園背部を無処理とし、発生土の場内処分を可能とした。
隣家に波板の仕切りが設置されており、雑草の張り出しの心配がない。
砂利敷に際しては、ご高齢の方でも歩きやすいよう、地面に埋もれていた既存の飛び石を掘り出し、使用できるようにしました。
さらに、庭園内に散在していた自然石を縁石の欠けた箇所に据え直しました。
砂利敷に使用した砂利は、敷設面積が広いため高価な化粧砂利ではなく、バックヤードなどに用いられる一般的なグレー色の砂利を採用しました。
安価な砂利でしたが、色合いや粒径が現場によく合い、景観上の違和感はほとんどありませんでした。
地面に埋もれていた飛び石周囲を掘削して露出させ、飛び石を使用できるようにした。
防草シートを隙間なく敷設することで
雑草発生を極力抑制。
また、既存植栽の株元の雑草対策として、バラ花壇には洋風のタピアンを、和風庭園部にはヤブコウジを植栽しました。
さらに、砂利敷の施工に支障となるアナベルやクリスマスローズなどを移植し、既存植栽との調和を図りました。
和風の雰囲気に合う地下茎で広がるヤブコウジを補植し、雑草対策とした。
匍匐性のタピアンにより、雑草対策だけでなく、無機質なブロックの被覆も期待。
広い庭園の改修費をなるべく抑える配慮をしつつ、飛び石の再利用と効果的な雑草対策を施すことで、ご高齢のお施主様でも利用しやすく、メンテナンスしやすい庭園に生まれ変わりました。
(2025年10月完成)