こちらのお庭は、四方を建物に囲まれた半日陰の環境で、敷地の隅にはサンデッキ施工の際に生じた残土が積まれていました。
地面については、降雨後は池のように滞水する典型的な排水不良の土壌で、サンデッキ設置の際に設けられた雨樋からの排水が滞水をさらに助長しているようにも見えました。
お施主様のご要望は、地面の滞水の解消と、残土の処理、またサンデッキの前にある立水栓の移設でした。
さらに既存の庭石やレンガをなるべく活用し、ヤマブキ、アガパンサス、シランなどの鉢植えを活かした作庭をすることでした。
敷地の隅(写真左)に残土が積まれ、
庭石などが散乱。
降雨後の滞水状況。サンデッキの雨樋(立水栓の背部の白い管)から地面への排水が滞水を助長。
プランとしては、まずコストを抑えるために、残土の有効活用を前提に考え、築山を設けることとしました。
築山は、ただ山にしただけでは雨で浸食され、崩れてしまいます。そのため、植生で覆う必要がありますが、一般的には芝またはコケで覆うことが多いです。
今回は半日陰の環境とメンテナンス性を考慮し、芝ではなくハイゴケを用いました。
サンデッキの横には味わい深い樹形のツツジの既存木があり、既存の庭石の活用も考えると苔庭の和風庭園が合うと思われ、コンセプトとしました。
奥側に窪みを設け、山並みを表現。ツツジの既存木(写真右)と既存石を活かした修景。
築山以外の庭園内の通路部分については、築山を苔とした場合は明るい色の砂利敷とすることが多いですが、今回はコストを抑えるためディコンドラの播種とし、和洋折衷の雰囲気に仕上げました。
植栽については、お施主様より果樹のリクエストがあったため、日陰に耐えて1本でも結実するジューンベリーをシンボルツリーとしました。
低木およびグランドカバーについては、既存のヤマブキ、シラン、アガパンサスをメインに、タマシダ、ヤブコウジ、リュウノヒゲ、アジュガ、ティアレアなどの花実や葉形に特徴のある耐陰植物を取り入れ、和風庭園を引き立たせました。
地面の滞水対策については、2箇所に浸透桝を設置し、これらを地中を通る有孔管で連結して、雨水が浸透するよう配慮しました。さらにサンデッキの雨樋と浸透桝を直接接続することで排水が地表面に滞水しないようにしました。
これらの排水対策と合わせて立水栓の塀際への移設を行い、庭のスペースを広く使えるようにしました。
立水栓の下には、既存のレンガを活用したガーデンパン(水受け)を作りました。
土壌には真珠岩パーライトと堆肥を施用し、粘土質から水はけのよいサラサラの土性に改良しました。
この後立水栓を移設して地下排水管を新設。サンデッキの雨樋(写真右)と共に浸透桝へ接続。
庭の外にもう一つの浸透桝を設け、先の浸透桝と有孔管で接続。庭外への排水を促した。
その他庭園部以外については、こちらのお宅は北側の玄関から南側の庭まで通路が続くクローズド外構でしたが、北側の玄関横ではカイヅカイブキが大木化し、見た目も悪く、枝の張り出しが起きていました。
そのためカイヅカイブキを伐採して、代わりに成長の遅いヒメシャリンバイを植え、通路部分と敷地外への枝の張り出しがなるべく起こらないようにしました。
また通路部分にはディコンドラを播種して、既存のレンガを使ったステップストーンを設け、庭園部と統一感を持たせました。
カイヅカイブキが大木化し、道路側へ張り出していた。
成長の遅いヒメシャリンバイを植え、枝の張出しを抑制。通路部分はディコンドラ播種。
(2024年10月完成)