2018- 04-03

#17  ハーブガーデンにはハーブだけを植えておけばよい??
  ~ガーデンの骨格作りの大切さ~ 

「ハーブや花をたくさん植えて、柔らかな雰囲気の庭を作りたい・・」

 

 ガーデンを新しく作る際に、こういったことを思い浮かべる方は多いと思います。

れでは、ハーブや花をたくさん植えるガーデンには、それ以外の植物は全く植える必要はないのでしょうか??

 

 最近施工した現場を通して、少しばかり思うところがあったので、今回はこれについて記したいと思います。

■樹木を全く植えなかった現場の成れの果て

 私は以前の仕事で、道路の料金所付近の植栽計画について立案したことがありました。

 その時に挙がったのが、「ツツジ等の低木類を植えると剪定に手間やコストがかかるので、なるべく低木は植えずに下草類を植えるべき」という考え方でした。

 

「低木はどんどん大きくなるので剪定をしないといけない。でも草であれば少なくとも邪魔になるほど伸びることはないし、除草作業程度の管理で済む」と。

 

 そんなことで、料金所には低木は植えずに、代わりに色々なグラウンドカバーを用いた修景が施されました。もう10年位前のことです。

 

 しかし、施工後何年かして現場に行ってみると、グラウンドカバーが衰退していたり、隙間から雑草が伸びてきているようなものが多く見受けられました。

 特に冬場になると、地上部が何となく寂しい感じになっていたものが多かったと記憶します。

植栽直後のフイリヤブランの状況。

植栽後約7年経過時点の状況。原因は分からないがフイリヤブランはほとんど衰退してしまっている。

 なぜ、このようになってしまったのでしょうか?

 

 いくつかの理由が考えられますが、一つは、下草類は多年草も含めて永続性という点では樹木には劣るものが多いということがあると思います。

 草種によっても差異はありますが、雑草との競合に負けてしまったり、夏場の乾燥に耐えられなかったりといったことが草本では往々にして起こり得るのです。

 また、冬場の地上部の状態については、幹や常緑がしっかりと残っている樹木に比べて、草本では地上部の茎葉のボリュームが落ちるなどして見劣りする場合が多いです。

 

 それと、そもそもよく考えて欲しいのですが、本当に草本の方が樹木よりも管理は楽なのでしょうか?

 例えば、低木の寄せ植えであれば、中腰の姿勢でハンディータイプのトリマーを使うことで簡単に剪定できます。

 一方、草本でも特に雑草に被圧されやすいタイプの草種では、腰を下ろした除草作業が必須となり、重労働な上に作業能力も剪定作業よりもずっと非効率です。

 

 つまり、草本の方が樹木よりも管理が楽だとは一概には言えないのです。

 

 

 さらに、樹木類の必要性をもう一つ挙げるとすれば、丈の高い樹木は奥行きや立体感といったデザイン面での効果を引き出すのにとても大切なものです。

 私は過去に、広い敷地に樹木をほとんど植えずに、草本だけで修景した現場を経験したことがありますが、のっぺりとした何とも言えず寂しい感じの現場が出来上がったのを覚えています。

 

 このようなことから、たとえハーブガーデンのような庭の修景においても、要所には骨格となる植物をきちんと取り入れるべきと私は考えています。

ハンディータイプのトリマーを用いたツツジの剪定作業の様子。
人力除草よりも作業性はずっとよいです。

例えば、この植栽の樹木がなかった場合を想像してみて下さい。
丈の低い植物だけでの修景にはデザイン面でも限界があります。

■ハーブガーデンだけでない、ガーデンの骨格づくりの大切さ

 最近、既存の庭園の改修(補植作業)のご依頼を頂きました。

 こちらの現場は、当初の設計者の意図がとてもよく感じられる和風の庭園でしたが、春夏には旺盛に植物が繁茂する反面、秋冬になると地上部が空いて少し寂しい感じになっていました。

 

 なぜ、このようになってしまうのか? 当初の現場を見ていないので明確なことは分かりませんが、恐らくは地際付近の植栽を草本主体としたために(それはそれで意図があったのだとは理解しますが)、年数の経過とともに衰退し、また冬場には地上部が寂しくなってしまうのだろうと、私なりに解釈をしました。

 

 それで、補植する植物はなるべく木本類や冬でもしっかり地上部が残るものにして、永続性を考えて庭の地際部の骨格を作り上げるよう意図した設計を行いました。

補植前の状況。

補植後の状況。センリョウやトクサ等の冬場に衰退しない植物をなるべく用い、さらに修景のアクセントとして四ツ目垣を設置。

補植したセイヨウイワナンテン(中央)。今は小さいが、やがてしっかりと地上部を形成するはず。

グラウンドカバーとして補植したヤブコウジ(斑入り)。
草本のグラウンドカバーよりも永続性があると考えて採用。

 今回の結論は、「ガーデンの骨格たるベースは、永続性のある植物できちんと作り上げるべき」ということです。

 

 最後に、以前何度かセミナーを拝聴したことのある麻生恵さんのホームページの掲載記事をご紹介したいと思います。

 今回の私の考え方にとても近いもので、「冬の庭を作るのがガーデンデザイナーの仕事」という考え方にはとても共感できます。こちらもぜひご一読頂ければと思います。 

 庭が何となく寂しく感じる、植栽が衰退してしまっている・・もしこんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度当事務所までご相談下さい!